勤務表ができたら印刷して詰所に貼る。写真を撮ってグループチャットに流す。多くの施設がこの形だと思います。
この記事の結論
勤務表を職員のスマホに出すことの本質は、配る手間が減ることではありません。どの版を、いつ、誰に見せるかを施設側が握れるようになることです。
作りかけの表は流れず、共有した版だけが届く。変えたらお知らせが飛ぶ。この記事では、その仕組みと、いまできないことを正直に書きます。
勤務表を写真で配る運用は、どこで詰まるか
紙とチャットの運用は、3つのところで詰まります。
読んだかどうかが分からない。チャットに流しても、既読が付いたかどうかと、実際に自分の勤務を確認したかどうかは別です。
過去の表を探せない。「先月の何日、私は日勤でしたよね」と聞かれたとき、チャットを遡ることになります。画像なので検索にも引っかかりません。
変更が伝わらない。これが一番大きいところです。1人交代しただけでも、貼り直して、撮り直して、また流す。流したあとに気づいた人と気づかなかった人が出ます。
看護師の相談掲示板を見ると、勤務変更をめぐるやりとりや変更が伝わらないまま欠勤扱いになった話が繰り返し出てきます。伝達の失敗は、そのまま人間関係の問題になります。
なお、勤務表の写真を個人のスマホで撮ってチャットに送る運用には、情報の持ち出しという別のリスクもあります。氏名と勤務が並んだ表は、それ自体が個人情報です。
「シフトアプリ」には別物が2種類ある
ここで用語を整理させてください。「シフトアプリ」で検索すると2種類のものが出てきます。
ひとつは職員が自分で手入力する手帳型です。自分の勤務を自分でカレンダーに打ち込み、給料の見込みを出したりします。施設とはつながっていません。
もうひとつは施設が作った表が職員に届く型です。施設側で勤務表を組み、それが職員のスマホに配られます。
検索で上位に出てくる記事の多くは前者の話です。この記事は後者の話をします。
職員に届くのは、リーダーが「共有」を押した版だけ
ここがいちばん大事なところです。
1か月の勤務表には、たいてい複数の版があります。下書き、調整中、確定。このうちリーダーが管理画面で「共有」の操作をした版にだけ、公開日時が立ちます。
職員のアプリは、公開日時が立っている版のうちいちばん新しいものだけを読みます。共有していない版は、どれだけ作り込んでいてもアプリには出ません。ひとつも共有していない月は「施設のシフトはまだ公開されていません」と表示されます。
つまり「まだ見せたくない」と「早く知らせたい」が、同じ画面の中で両立します。調整中の表を職員に見られる心配をせずに作業でき、決まった時点で共有を押せばその瞬間から見えるようになります。
ひとつ補足しておきます。これは共有の操作をした版だけが表示される、という動きの説明です。「未公開の勤務表には技術的に到達できません」という保証として読まないでください。
職員の画面に出るもの・出ないもの
職員のアプリの下部には3つのタブがあります。シフト、希望、全体です。
自分の勤務は当然出ます。日付をタップすると、その日の詳細が開きます。ここで自分用に勤務時間を微調整したり、自分のメモを書いたりできます。
施設が入れたセルのメモも読めます。たとえばリーダーが「病棟会あり17:00〜」とセルに書いておけば、職員側の詳細画面にそれが読み取り専用で出ます。施設が登録した予定も同じ画面に並びます。
自分の勤務を端末のカレンダーに書き出せます。Google カレンダーや iCloud に流し込めます。追加していく方式ではなく、その月をあるべき状態に合わせるやり方なので、何度同期しても重複しませんし、施設側で勤務が変わったときは更新や削除まで反映されます。
一方で、同僚の勤務・当番表・AIチャットは、施設の設定で公開している場合だけ出ます。いずれも既定はオフです。
このうち同僚の勤務一覧については、見える範囲をサーバー側で決めています。①施設全体のスイッチ ②その職員個人の公開フラグ ③共有済みの版であること、の3つが揃わなければ、サーバーは何も返しません。アプリ側で隠しているのではなく、そもそもデータが渡らない作りです。
シフト希望をアプリで集めると、締切の扱いが変わる
希望の提出もアプリからできます。
休みと有給はスタンプをタップするだけです。それ以外の勤務区分を希望したいときは、日別の詳細画面から選びます。1日に複数の勤務区分を希望でき、任意でメッセージも添えられます。施設が当番機能を使っていれば、担当したい当番も選べます。
紙の希望票と違うのは、締切がサーバー側でも効くことです。次のような提出はサーバーが拒否します。
- 締切を過ぎた提出
- そもそも受付を設定していない月への提出
- 他人になりすました提出
- 別の施設への提出
画面から入口を消すだけでなく、送っても通らない作りにしてあります。締切後の駆け込みをリーダーが個別に断る、という気まずい役回りが減ります。
なお圏外で提出したものは端末に保存され、オンラインに戻ったときに自動で送られます。訪問先や地下で操作しても消えません。
出された希望は、リーダーの手元で自由に動かせる
希望には2つの層があります。職員本人が出したものと、リーダーが調整したものです。
この2つは別々に保たれています。リーダーが施設側で調整しても、本人が出した内容は書き換わりません。そして調整の中身は職員のアプリには出ません。
なぜこうしているかというと、希望をそのまま制約にすると勤務表が組めなくなるからです。全員の希望を100%通そうとすると、必要人数と衝突して1枚も出てこなくなります。誰かの希望を少し削って全体を成り立たせる、という現場の判断を残すために、層を分けてあります。
このあたりの事情は生成AIでシフト表は作れるのかにも書きました。
変更を伝える — お知らせと通知
お知らせは3種類が自動で出ます。
- シフトを公開したとき
- 公開済みのシフトを更新(再共有)したとき
- 希望の受付を締め切ったとき
これに加えて、まだ提出していない人にだけリマインドを送れます。全員に「出してください」と一斉送信して、出した人まで急かしてしまうことがありません。ただし送るのはリーダーの操作で、締切前に自動で飛ぶわけではありません。
アプリにはお知らせの一覧と未読のベルがあり、タップすると対象の月に飛びます。プッシュ通知も実装しています。
ただし、通知が必ず届くとは書けません。端末の設定、OS の省電力、通信の状態など、こちらで制御できない要素が多くあります。通知は補助と考えて、掲示や口頭の連絡を完全に置き換えるものとしては設計しないほうが安全です。
使い始めるまでの導線 — ログインと連携
職員がアプリを使い始めるまでの流れは、少し独特かもしれません。
アプリの中に新規アカウント作成の導線はありません。ログインは Google か Apple のどちらかで、パスワードを持ちません。職員が新しくIDとパスワードを覚える必要がなく、リーダーが初期パスワードを配る作業も発生しません。
そして、名簿への登録とログインアカウントは別物です。施設側で名簿に職員を登録する時点では、メールアドレスは要りません。施設がQRコードを出し、職員が自分のアカウントでそれを読んだときに、名簿の行とアカウントが紐づきます。
QRの配り方は3通りあります。
- その場で画面に出すライブQR(有効24時間)— 朝礼などで一斉に読んでもらう
- A4に16人分をまとめて印刷する紙QR(有効31日)— 切って配る
- メールを送り、届いた端末のブラウザで承認する方式(有効7日)— 遠隔の人向け
1つのアカウントが紐づけるのは同時に1施設までで、本人がアプリから連携を解除できます。
なお、アカウントを作らなくても個人のカレンダー機能はすべて使えます。起動していきなりログインを求めません。ただしログインせずに入れたデータは端末の中だけに残り、あとからログインしてもクラウドには上がりません。
いまアプリでできないこと
正直に書いておきます。
- 打刻・勤怠管理はありません。出退勤の記録は取れません
- 職員同士のシフト交換や、勤務変更の申請はできません。変更はリーダーが管理画面で行い、再共有します
- アプリから当番を編集することはできません。当番は閲覧のみです
- iPad には対応していません。iPhone 前提で作っています
- 職員が自分で入れたメモや時間の調整は、端末の中にだけ残ります。クラウドにバックアップされないので、機種変更で消えます(施設から届く確定シフトと、提出済みの希望はサーバー側にあるので残ります)
「アプリを入れておけば安心」ではありません。個人が入力した層と、施設から届く層は別だと考えてください。
まとめ — 導入前に確認しておくとよいこと
職員のスマホに勤務表を出すとき、先に決めておくとよいことが3つあります。
誰に何を見せるかを決めておく。同僚の勤務を互いに見られるようにするかどうかは、施設の文化によって答えが変わります。既定はオフなので、必要なら意識して有効にしてください。
通知は補助と考える。届かないことを前提に、重要な変更は別の手段でも伝える運用にしておくと安全です。
個人が入れた分は残らないと伝えておく。職員が自分でメモを書き込んで、機種変更で消えて驚く、という事故を防げます。
そのうえで、いちばん効くのは変更を伝える手間が減ることだと思います。1人交代しただけで貼り直して撮り直して流す、という往復がなくなるだけで、月末の負担はかなり変わります。