様式9

夜勤72時間ルールは、誰を分母に数えるのか

72時間を超えた・超えないでもめるとき、原因は計算式ではなく「誰を分母に数えるか」と「勤務時間をどの段に書くか」にあります。令和8年度の通知に沿って、間違えやすいところを順に見ていきます。

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様式9を作っていて、月平均夜勤時間数が72時間を超えそうになる。もう一度数え直すと、今度は違う数字が出る。

こういうとき、たいてい計算式は合っています。

この記事の結論

夜勤72時間でつまずく原因は、ほぼ2つに絞られます。分母の人数に誰を数えるかと、1日の勤務時間を様式9のどの段に書くかです。

どちらも式の外側にある話なので、電卓を叩き直しても答えが変わりません。この記事では、令和8年度の通知に沿ってこの2つを整理します。

様式9とは何を出す書類か

様式9の正式名称は「入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類」です。入院基本料などの施設基準を届け出るときに、届出書に添えて所在地の地方厚生(支)局長に出します。

届出には原則として届出前1か月の実績が要ります。〔届出上の注意〕にも、届出前1か月の各病棟の勤務実績表を添付することと書かれています。

ここで先にひとつ区別しておきます。様式9は医科の入院基本料等の届出書類で、対象は保険医療機関の病棟です。介護保険施設で出す「勤務形態一覧表」は別の制度の別の様式で、数え方も違います。介護施設の管理者の方は、この記事の内容をそのまま当てはめないでください。

以下、制度の内容はすべて令和8年3月5日 保医発0305第7号「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年6月1日適用)によります。従前の令和6年通知は令和8年5月31日限りで廃止されているので、古い資料を見ている場合は差し替えてください。

「夜勤」は何時から何時までか

数え始める前に決めることがあります。夜勤時間帯の枠です。

通知でいう夜勤とは、22時から翌5時までを含む連続する16時間に現に勤務することを指します。この16時間をどこに置くかは、それぞれの医療機関が決めます。

つまり「16時30分〜翌8時30分」でも「16時〜翌8時」でもよく、どこに置いたかによって、以降のすべての数字が変わります。ここが動くと分母も分子も動くので、まず院内で確定させてください。

72時間はどう計算するか

算式そのものは単純です。

月延べ夜勤時間数 ÷ 夜勤時間帯の従事者数 ≦ 72時間

様式9の欄でいうと、⑥=〔(D−E)/B〕です。Dが月延べ夜勤時間数、Eがその再掲、Bが夜勤時間帯の従事者数にあたります。

通知には計算例も載っています。夜勤時間帯を16時から翌8時に設定し、夜勤時間帯に従事する実人員数が23人、月延べ夜勤時間数が1,440時間だった場合です。

1,440 ÷ 23 = 62.6時間

72時間以下なので基準を満たします。式はこれだけです。問題は、この「23人」と「1,440時間」をどう数えるかにあります。

分母から外れる人・外れない人

分母の人数から外す人がいます。しかも分子の時間からも同時に外します

  • 夜勤専従者
  • 急性期病院一般入院基本料・急性期一般入院基本料・7対1・10対1の病棟では、月の夜勤時間が16時間に満たない人(短時間正職員制度を導入している場合、短時間正職員は12時間に満たない人)
  • それ以外の病棟では、月の夜勤時間が8時間に満たない人

ここで注意していただきたいことがあります。いずれも「未満」で除外です。16時間ちょうど勤務した人は除外されず、分母に数えます。「16時間以下を除く」と読み違えると、分母がひとり減って結果が変わります。

もうひとつ。看護補助者の夜勤時間は72時間の計算に入りません。〔B〕〔D〕〔E〕はいずれも看護職員(看護師・准看護師。保健師と助産師は看護師の欄)の数です。

判定は病棟ごとではない

これも取り違えやすいところです。

72時間の判定は、同じ入院基本料を算定する病棟全体で行います。病棟(看護単位)ごとに72時間以下である必要はありません。A病棟が75時間でもB病棟が69時間で、合わせて72時間以下なら基準を満たします。

判定に使うのは直近1か月または直近4週間の実績の平均値です。新規に届け出た直後は、直近3か月間または12週間の平均でかまいません。

なお療養病棟入院基本料の看護職員は、この72時間の規定の対象外です。特定入院料を算定する病棟の看護要員も、回復期リハビリテーション入院医療管理料と地域包括ケア入院医療管理料を除いて夜勤時間数の計算対象になりません。

いちばん間違えるのは上段・中段・下段の書き分け

様式9の勤務実績表は、職員1人につき3段あります。

  • 上段 … 日勤時間帯の勤務時間
  • 中段 … 夜勤時間帯に当該病棟で勤務した時間
  • 下段 … 病棟以外を含む夜勤時間数

そして、〔D〕月延べ夜勤時間数に入るのは中段の計です。下段ではありません。〔C〕月延べ勤務時間数は上段+中段で、下段は入りません。

ここを取り違えると、外来や手術室での夜間勤務まで病棟の夜勤時間に混ざって、数字が跳ね上がります。

日をまたぐ夜勤は分けて書く

夜勤は日付をまたぎます。16時30分に始まって翌朝9時に終わる勤務なら、当日と翌日に分けて書きます。夜勤時間帯を16時30分〜翌8時30分に置いている場合、当日が7.5時間、翌日が8.5時間です。

兼務者は按分する

夜勤時間帯に病棟以外でも働く人は按分します。

夜勤時間帯に病棟で勤務した時間 ÷ 夜勤時間帯の延べ勤務時間(病棟以外を含む)

たとえば16時30分から翌9時までの勤務のうち、外来が16時30分〜20時30分、病棟が20時30分〜翌9時という看護師が月に4回勤務した場合、病棟夜勤48.0時間 ÷ 総夜勤64.0時間 = 0.75人として分母に算入します。

分母は整数になりません。「人数なのだから整数のはず」と思って丸めてしまうと合わなくなります。

申し送りの扱いは月単位で統一する

申し送りの時間は、申し送った側の夜勤時間から除いてもかまいません。ただし除く/除かないは、原則として病棟全体で月単位に統一します。人によって、日によって変えることはできません。

勤務時間に入れるもの・入れないもの

数える対象そのものにも決まりがあります。

入れるもの

  • 通常の休憩時間
  • 兼務者の病棟勤務時間
  • 院内感染防止対策委員会、医療安全管理のための委員会、安全管理の体制確保のための職員研修、褥瘡対策委員会、身体的拘束最小化チームの業務および研修
  • 指示された質向上研修(職員1名につき月1時間まで)
  • 緊急時等に病棟外の患者へ短時間(30分程度)対応した時間
  • 患者に付き添って病棟外で一時的に看護した時間

入れないもの

  • 休憩時間以外の、病棟で勤務しない時間
  • 有給休暇
  • 残業時間
  • 上記以外の研修

休憩は入れるのに残業は入れない、という組み合わせは直感に反するので、ここは覚えてしまったほうが早いかもしれません。

そもそも勤務実績表に載せない人もいます。専ら病院全体の看護管理に従事する看護部長等、附属看護師養成所等の専任教員、外来・手術室・中央材料室等の勤務者、病棟単位で算定する特定入院料に係る病棟等の勤務者(兼務者を除く)、1か月以上の長期欠勤者、機能訓練指導員、主として洗濯・掃除等を行う者です。

端数処理は四捨五入ではない

令和8年度の通知では、別紙5に項目ごとの端数処理が明記されました。

端数処理
① 1日平均入院患者数小数第1位を切り上げ
② 月平均1日当たり看護職員配置数小数第2位以下切り捨て
④ 平均在院日数小数点以下切り上げ
⑥ 月平均夜勤時間数小数第2位以下切り捨て

四捨五入ではありません。⑥が72.04時間だった場合、切り捨てて72.0時間となり基準を満たしますが、四捨五入する癖で72.0としているなら、たまたま合っているだけです。

なお令和8年度改定で、72時間ルールの定義・算式・閾値・夜勤専従者の除外・申し送り・按分の考え方は変わっていません。変わったのは、この別紙5に算出方法と端数処理が書き込まれたことと、新しい入院基本料や加算が様式に載ったことです。

72時間を超えたらどうなるか

超えた場合の受け皿も決められています。

月平均夜勤時間超過減算は、一般・結核・精神・障害者施設等入院基本料で72時間の基準「のみ」満たせなくなったときに、満たせなくなってから直近3月に限って算定できます。ただし病棟種別を問わず、超過減算または夜勤時間特別入院基本料を最後に算定した月から1年以内は算定できません。採用活動の状況等の書類を毎月10日までに出す必要があります。

夜勤時間特別入院基本料は、一般・結核・精神で72時間のみ満たせない場合に、当分の間算定できます。こちらは医療勤務環境改善支援センターに相談したうえで、相談状況と採用活動の状況の書類を毎月10日までに出します。

また、平均在院日数と月平均夜勤時間数については「暦月で3か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動」であれば、変更の届出は要らないとされています。この規定を「◯◯時間までなら大丈夫」という具体的な数字に読み替えている資料を見かけますが、通知に書かれているのはこの文言だけです。

数える前に、勤務表の側で見えるようにする

ここまで見てきたことは、すべて月が終わってから数える話です。

問題は、月末に集計して初めて72時間を超えたと分かっても、もう勤務表を直せないことです。分母から外れる人が1人増えただけで数字は動きますし、兼務者の按分が思ったより効くこともあります。

本来は、勤務表を組んでいる段階で見込みが見えているのが自然です。

わたしたちが作っている Nafty では、実働管理の画面に、いま組んでいる予定シフトから出した月平均夜勤時間の見込みを常時出しています。まだ勤務を動かせる段階で気づけるようにするためです。様式9そのものも、勤務実績から集計して Excel として出力できます。

ただし現時点では、1日平均入院患者数と配置区分は手入力ですし、平均在院日数は外部システムの値を入れていただく必要があります。地域包括ケア病棟には未対応です。全部が自動になるわけではありません。

様式9のExcelフォームを配布しています

いまお使いの様式9が古い版だったり、そもそも手元に無かったりする場合のために、令和8年度版の様式9 Excel を無料で配布しています。勤務実績を入れると月平均夜勤時間数が自動で計算される、5シート構成のものです。

施設名・ご担当者名・メールアドレスをご記入いただければ、その場でダウンロードできます。

様式9のExcelフォームをダウンロードする

まとめ

夜勤72時間で数字が合わないとき、疑うべきは式ではありません。

分母から外す人を「以下」で切っていないか。16時間ちょうどの人は数えます。

中段と下段を取り違えていないか。〔D〕に入るのは当該病棟での夜勤だけです。

病棟ごとに判定していないか。判定は同じ入院基本料を算定する病棟全体で行います。

この3つを確かめてから、もう一度数えてみてください。