介護

常勤換算は、分母と分子のどちらで間違えるのか

常勤換算の式そのものは割り算ひとつです。それでも数字が合わないのは、分母の「32時間」の読み方と、分子に入れてよい時間の範囲を取り違えているからです。

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3:1 を満たしているはずなのに、指導監査で指摘された。あるいは、自分で数えた常勤換算と、システムが出した数字が合わない。

この記事の結論

常勤換算の式は割り算ひとつです。それでも数字が合わないのは、式の外側にある2つを取り違えているからです。

分母に何時間を置くか(「32時間」の読み方)と、分子にどの時間を入れてよいか。この2つを条文に沿って確かめます。

まず、式そのもの

指定介護老人福祉施設の基準について定めた通知(老企第43号)は、常勤換算方法をこう説明しています。

当該指定介護老人福祉施設の従業者の勤務延時間数を当該施設において常勤の従業者が勤務すべき時間数(一週間に勤務すべき時間数が三二時間を下回る場合は三二時間を基本とする。)で除することにより、当該施設の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について 第二の6(1))

式にすると、こうです。

勤務延時間数 ÷ 常勤の従業者が勤務すべき時間数

割り算です。難しいのはここではありません。

分母 — 「32時間」は上限ではなく下限の扱い

括弧の中をもう一度読んでください。

一週間に勤務すべき時間数が三二時間を下回る場合は三二時間を基本とする

ここを「常勤は32時間」と読んでしまうと、数字がずれます。

分母に入るのは、自施設が定めている常勤職員の週所定労働時間です。 就業規則に週40時間と書いてあるなら40時間、週38時間なら38時間です。

32時間が出てくるのは、自施設の所定時間が32時間を下回っているときだけです。そのときに限って、32時間を基本として扱います。

言い換えると、32時間は分母が小さくなりすぎないための下限であって、常勤の定義そのものではありません。所定が週40時間の施設で分母に32を入れると、常勤換算が実際より大きく出ます。

分母は就業規則にあります。 ここを確認せずに数え始めると、以降の計算がすべてずれます。

分子 — 「勤務延時間数」に入れてよい時間

条文の定義はこうです。

勤務表上、当該指定介護福祉施設サービスの提供に従事する時間として明確に位置付けられている時間の合計数

大事なのは「勤務表上、明確に位置付けられている」という限定です。実際に働いた時間すべてではありません。

そして、こう続きます。

従業者一人につき、勤務延時間数に算入することができる時間数は、当該施設において常勤の従業者が勤務すべき勤務時間数を上限とすること

1人あたりの上限は、常勤の所定時間です。

つまり、ある職員が残業して所定を超えて働いても、その人の常勤換算は 1.0 を超えません。上限で頭打ちになります。

ここを知らずに「実際の勤務時間を全部足す」やり方で数えると、常勤換算が実態より大きく出ます。残業が多い施設ほど、ずれが大きくなります。

兼務している職員は按分する

複数の事業所や職種を兼務している職員は、そのまま1人として数えません。

その施設のサービス提供に従事した時間だけを分子に入れます。結果として、1人の職員が 0.6 人分や 0.75 人分として算入されることになります。

「人数なのだから整数のはず」と思って丸めてしまうと合わなくなります。分母も分子も、人数は小数になります。

丸めるのは最後の1回だけ

もうひとつ、実務でずれる原因があります。丸める場所です。

職員ごとに常勤換算を出して、それぞれを小数第1位に丸めてから足していくと、人数が増えるほど誤差が積み上がります。20人いれば20回分の丸め誤差が乗ります。

正しくは、個人の寄与は丸めずに合算し、最後に一度だけ丸めます。表示のために丸めた値と、判定に使う値は別に持っておくのが安全です。

わたしたちが作っている Nafty でも、この方針で実装しています。個人段階では丸めず、判定には丸める前の値を使い、画面と帳票に出すときだけ丸めた値を使う、という分け方です。

医療の様式9とは別の制度です

念のため書いておきます。

介護保険施設の人員配置基準と、医科の様式9(入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類)は別の制度です。 根拠になる告示も、数え方も、提出先も違います。

様式9 の解説をそのまま介護に当てはめると数字が合いません。逆も同じです。医療の記事を読むときは、その前提を確認してください。

(様式9 のほうは夜勤72時間ルールは、誰を分母に数えるのかに書きました。)

数える前に、シフトの側で見えるようにする

ここまでの話は、すべて月が終わってから数える前提でした。

問題は、月末に集計して基準を下回っていると分かっても、シフトはもう直せないことです。1人の勤務を動かすだけで常勤換算は変わりますし、兼務者の按分は思ったより効きます。

本来は、シフトを組んでいる段階で見込みが見えているのが自然です。

Nafty では、いま組んでいるシフトから常勤換算を計算して、3:1 をはじめとする基準の充足を確認できます。対応しているのは特別養護老人ホームと介護老人保健施設の2種別です。詳しくは介護施設の方へをご覧ください。

ただし、ここで出る数字は自己点検値であって届出値ではありません。指定権者の判断に代わるものではないので、提出前には必ず内容をご確認ください。

まとめ

分母は自施設の週所定労働時間です。 32時間は、所定がそれを下回るときの下限であって、常勤の定義ではありません。就業規則を確認してください。

分子は勤務表上に位置付けられた時間で、1人あたり常勤の所定時間が上限です。 残業しても 1.0 を超えません。

兼務者は按分するので、人数は小数になります。 丸めるのは最後の1回だけです。

式が合っているのに数字が合わないときは、この3つのどれかを疑ってみてください。