シフト作成システムを検討するとき、現場のリーダー(看護師長やフロアリーダー)の方がまず注目されるのは「毎月丸2日かかっていたシフト作成が、30分〜1時間で終わるようになる」という作成時間の短縮です。
一方で、病院の看護部長・事務長や介護施設の施設長・法人本部など、組織全体の運営や予算を見る立場の方とお話しすると、もうひとつ別の論点が必ず出てきます。
それが、「シフト表の上で起きている人員配置の凸凹(偏り)を平滑化すると、どれだけの人員余力・人件費効果が生まれるのか」という話です。
前回の展示会セミナーでもこの試算をお出ししたところ、多くの経営層・管理者の方から反響をいただきました。小数点以下の複雑な制度計算ではなく、現場で直感的にイメージできる図解と数字でわかりやすく整理します。
この記事の結論
手作業やフロア単位のシフト作成では、希望休や連勤制限のパズルを埋める過程で「人が厚すぎる日(余剰)」と「薄い日(不足)」の凸凹や、1F・2Fなどフロアごとに抱える予備人員(+1人)の重複が必ず発生します。
この配置の偏りをわずか2〜3%平滑化(平坦化)して厚い日から薄い日へ再配分したり、1F・2Fをまとめて組んだりするだけで、40人の組織なら月26人日=常勤1人分、80人の組織なら常勤約2人分(年間人件費換算で数百万〜1,000万円超相当)の余力が生まれます。
なぜシフト表には「見えない余剰」と「慢性的な不足」が同居するのか
現場のシフト表を1か月分並べて日ごとの出勤人数を棒グラフにすると、多くの施設で「きれいな横一線」にはならず、日によってギザギザの波ができます。
たとえば「日勤は本来7人いれば回る」というフロアで、火曜日は9人出勤しているのに、木曜日は6人しかおらずギリギリで回している——という状態です。
なぜこのような凸凹が起きるのでしょうか。原因はリーダーのスキルではなく、手作業で解けるパズルの限界にあります。
- 条件を破らずに「穴を埋める」だけで手一杯になる:スタッフ全員の希望休、夜勤の上限回数、夜勤明けの休み、連勤制限をすべて守りながら1か月の表を埋めると、「火曜日に人が余ってしまったが、1人動かすと夜勤明けと連勤が崩れるから触れない」という箇所がいくつも残ります。
- 「ベテラン不在」を防ぐために頭数を増やしてしまう:「人数は7人いるが、リーダーができる人がいない」「新人が重なって不安」という日を避けるため、念のため全体で8人・9人と厚めに置く日ができます。
- フロアごとに「+1人」の予備を別々に抱える:1Fと2Fで別々にシフト表を作ると、それぞれのフロアが急な欠員やパズルの端数に備えて「予備の+1人」を抱えます。
結果として、「火曜日は2人余っているのに、木曜日は1人足りず残業や派遣・応援でしのぐ」という、余剰と不足の同居が毎月くり返されます。
図解①:日ごとの出勤人数の「凸凹」を平滑化するイメージ(毎日7人必要なフロアの例)
試算①:日別の配置を「3%」平滑化すると常勤何人分になるか
では、この「厚すぎる日」に置かれている人を「薄い日」へ回す——つまり人員配置を平滑化すると、1か月でどのくらいの大きさになるでしょうか。
展示会のセミナーでお出しした、スタッフ40人・1か月30日の勤務表での試算です。
図解②:なぜ「たった3%」の平滑化が「常勤1人分」になるのか?(40人×30日の内訳)
1か月に延べ857日分の出勤がある組織では、全体のわずか3%(約33マスに1マス)の配置の偏りをならすだけで、月に26人日=常勤1人分の労働力が浮き上がります。
施設の規模別にみる平滑化のインパクト(25人〜80人)
同じ計算を、施設の規模別(25人・40人・60人・80人)に並べると次のようになります。80人規模では、控えめに 2%の平滑化 と置いた場合も併記しています。
| 対象スタッフ数 | 1か月の総マス数(×30日) | 延べ出勤日数(稼働率 5/7) | 平滑化できる日数(2%〜3%の目安) | 生まれる人員余力(常勤換算) |
|---|---|---|---|---|
| 25人 | 750マス | 約 536人日 | 月 11〜16人日 | 常勤 約 0.5〜0.7人分 |
| 40人 | 1,200マス | 約 857人日 | 月 17〜26人日 | 常勤 約 0.8〜1.2人分(約1人分) |
| 60人 | 1,800マス | 約 1,286人日 | 月 26〜39人日 | 常勤 約 1.2〜1.8人分 |
| 80人 | 2,400マス | 約 1,714人日 | 月 34〜51人日 | 常勤 約 1.6〜2.4人分(約2人分) |
※週5日勤務相当(稼働率5/7)、常勤1人あたり月21.4日勤務として算出したモデル試算です。実際の効果は各施設の配置基準・シフトルール・兼務範囲により異なります。
医療・介護の現場で常勤スタッフを1人採用・維持するコスト(給与・賞与・法定福利費・採用紹介手数料など)は、年間でおおむね 500万〜800万円規模 にのぼります。80人規模の施設で1〜2人分の配置ロスを解消できれば、それだけで年間600万〜1,600万円規模の人件費・採用コストの余力に直結します。
試算②:1F・2Fを「まとめて計算」すると、各フロアの予備(+1人)が半分で済む
もうひとつ、複数フロアや複数ユニットを持つ施設でさらに直感的に効いてくるのが「フロアごとに抱えている予備人員(+1人)の共有」です。
たとえば、1Fと2Fの2つのフロアがある施設を考えてみます。
1Fと2Fが別々にシフト表を作ると、各フロアのリーダーは「自分のフロアで急に1人休んだら回らない」「早番・遅番・夜勤のパズルが合わない」というリスクに備えて、1Fで「予備+1人」、2Fでも「予備+1人」の安全余裕(バッファ)を確保しようとします。シフト表の上では「0.5人だけ予備を置く」といった端数の配置はできないため、別々に組む限り必ず各フロアに1人ずつ、合計2人分の予備が必要になります。
図解③:1F・2Fを別々に組む(予備+2人)vs 1F・2Fをまとめて組む(予備+1人)
1Fと2Fが同じ日に一斉に欠員になる確率は低いため、1F・2Fをまとめて1回でシフト計算し、余裕のあるフロアから手薄な日をカバーする形にすれば、2フロアあわせて「予備+1人」で同じ安全性を維持できます。
これだけで、予備が「2人 → 1人」になり、丸ごと常勤1人分の余力が生まれます。さらに4フロアある施設で「1・2F」「3・4F」をそれぞれまとめて組めば、4人分抱えていた予備が2人分で済み、建物全体で常勤2人分の余力になります。ユニット型・従来型特養の夜勤配置の記事で詳しく書いた「夜勤や早出・遅出を建物単位で設計すると常勤換算で数人分の差が出る」という話も、根本の仕組みはこれと同じです。
なぜ手作業や一般的なシフトソフトでは平滑化できないのか
「それならExcelの手作業や、既存のシフトソフトでも同じことができるのでは?」と思われるかもしれません。しかし実際には、ここに構造上の壁があります。
| 比較項目 | 手作業(Excel・紙) | 一般的なシフト自動作成ソフト | Nafty(3軸同時・複数グループ一括) |
|---|---|---|---|
| 計算の範囲 | フロア・病棟ごとに1枚ずつ作成 | 多くは1グループ(1チーム・1拠点)単位で計算 | 1F・2Fなど連携する複数フロアを束ねて1回で計算可能 |
| 決める内容 | 勤務・配置・リーダー当番を人が頭の中で同時に考える | 「①誰がどの勤務か」だけを計算し、フロア配置や当番は後から手作業で割り当てる製品が多い | 「①勤務 × ②フロア配置 × ③当番・役割」を1回の計算で同時に最適化 |
| 日別の人数調整 | 最低人数を割らないよう穴埋めするだけで限界(厚すぎる日の解消まで手が回らない) | 勤務区分を増やしてフロアを表すため、フロア間の融通が効きにくい | フロア×役職のマス単位で必要人数を守りつつ、全体の凸凹を自動で平滑化 |
| 確定後の変更 | 1箇所直すと玉突きで崩れるため、予備人員(+1人)で吸収しがち | 再計算すると全体が変わってしまうことがある | 「入れ替え提案機能」で、全ルールを守れる交代候補だけを即座に提示 |
とくに大きいのが、「①誰がどの勤務か(早番・日勤・夜勤)」「②その日どのフロア・病棟に立つか」「③誰がリーダー・当番か」の3つを同時に計算できるかどうかです。
早番・日勤・遅番・夜勤・希望休・連勤制限・夜勤間隔をすべて守る
1F・2Fに何人立つか、フロア間の応援や兼務をどこに入れるかを同時に決める
「各フロアにリーダー層1人以上」「入浴・委員会当番」まで同時に割り当てる
後から「リーダー不在」が発覚しないため、各フロアに予備の+1人を積まずに済む
「①勤務」だけを決めてから後付けでフロアやリーダーを割り当てる方式だと、「人数は足りているのに2Fにリーダーができる人が1人もいない」という日が後から発覚します。それを防ごうとすると、結局「最初から各フロアに+1人ずつ予備を置いておく」しかなくなります。
Naftyは、勤務・フロア配置・当番の3つの軸を1回の計算で同時に解きます。最初から「2Fの日勤は4人以上、うちリーダー層1人以上」という条件を満たしたうえで、1F・2Fをまたいで動ける人を適切な日に配置するため、過剰に予備を積まずに済むのです。
生まれた「常勤1〜2人分の余力」は、現場のどこに効くか
「人員配置を平滑化して常勤1〜2人分の余力が生まれる」というと、「人を減らす(削減する)ための話なのか」と受け止められることがありますが、医療・介護の現場で実際に起きる効果はもっと前向きなものです。
- 高額な派遣・単発バイトや、慢性的な残業を減らせる:「薄い日」の穴埋めのために頼んでいた派遣スタッフや、手薄な日の残業を、手持ちの戦力の再配分だけで解消できます。
- 「あと1人採用できないと回らない」という逼迫から抜け出せる:採用難が続く中で、無理な緊急採用に頼らず、いまいるメンバーで安定したシフトを組めるようになります。
- 有給休暇の取得や研修・委員会の時間を確保できる:これまで「人が足りないから休めない」とされていた日に余力が回り、希望休や有給休暇を通しやすくなります。これはそのままスタッフの離職防止につながります。
- 月途中の急な欠員にも「入れ替え提案」で対応できる:せっかく平滑化したシフトも、月途中で急な休みが出たときに手作業で直すとまた偏りが生まれます。Naftyには、設定したすべてのルールを守ったまま誰と誰のシフトを入れ替えられるかを自動で見つける入れ替え提案機能があるため、運用中も無理のない配置を維持できます。
まとめ:リーダーには「時間のゆとり」を、組織には「人員のゆとり」を
シフト作成をAIと専用計算エンジンに任せる効果は、見る立場によって2つの面があります。
- シフトを作るリーダーにとって:毎月丸2日かかっていたパズル作業や、紙・Excelの希望転記から解放され、30分〜1時間で公平なシフトが完成すること。
- 病院・施設を運営する決裁者にとって:日ごとの過剰配置を2〜3%平滑化し、1F・2Fごとの予備人員(+1人)をまとめて共有することで、40人規模で常勤1人分、80人規模で常勤約2人分の人員余力(年間数百万〜1,000万円超相当)を生み出せること。
Naftyの利用料金は、料金ページのとおり少額の月額制(2か月間の無料トライアルつき)です。配置の平滑化によって月に数日分の応援・派遣・残業のムラが減るだけで、システム費用を大きく上回る効果が見込めます。
「自施設の人数とフロア構成だと、どこまでまとめて組めて、どれくらい配置をならせそうか」を知りたい方は、オンライン相談または資料請求からお気軽にお声がけください。いまお使いのシフト表(Excelや紙の写真のままで構いません)を拝見しながら、実際の画面でご一緒に確認いたします。